総評
第5回「夢けんプラザ絵画コンクール」の審査に今年も参加させていただきました。私自身、幼い頃から働く車が大好きで、このコンクールを毎年楽しみにしています。
早いもので、初めて審査に関わってから5年目を迎え、応募作品や参加していただく学校も広がり、このユニークな活動が定着してきたことに感動しています。
今年は、「滋賀の建設物」を新たなテーマに加えたことで、郷土の歴史的な建設物やランドマークとしての巨大な構造物、またそれと対峙する雄大な自然が描かれた作品に出会うことができました。審査を通じて、こどもたちが描く風景が未来へと繋がっていく感覚と、建設業が風景に関わるスケールの大きな仕事であることを実感させてくれました。絵を描いたり、ものを作ったり、そんな造形を楽しむ体験を通じて、このコンクールも未来のクリエイターやエンジニアを育成する活動として、更に発展していくことを願っています。
(成安造形大学 美術領域 現代アートコース 准教授 宇野君平)
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お魚のような未来の機械が協力して何かをつくる様子は、まるで家族のようです。それぞれに役割があるようで、「これはね、土を削って、、、。」「あれはね、土を集めて、、、。」など、作者の声が聞こえてくるようです。絵を通じて、作者の頭の中のイメージが描きながら広がっていく様子がとても素敵な作品です。
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ショベルカーやクレーン車のダイナミックなスケール感は、どこか恐竜のイメージと繋がります。両者が協力して働く様子が魅力的な作品です。
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ビルが上にいくほど大きくなる逆パースの効果、屋上のクレーンと空の関係や手前のショベルカーと働く人の関係が、豊かな空間を表現しています。
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これは杭打ち作業をしている様子でしょうか。地面と工事の様子や、背景のバランスが絶妙で、良く観察して描いた力作です。
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切る、つかむ、掘る、といった複雑な機能を丁寧に描き分けたり、遠隔操作による作業の様子を描き込むなど、現場の状況が良く伝わる作品です。また、未来を想定していますが、とても現実的で社会的なテーマにも取り組んでおり、多くの要素やメッセージを1枚の画面にバランス良く構成した秀作です。
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ダイナミックな構図が魅力的で、建築や橋などの巨大な構造物と、山や湖といった雄大な自然を対比させ、影がそれを繋ぐ意欲作です。
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弧を描くように表現された夕日を中心に、ホイールローダーとタンクローリーを象徴的に対峙させる構図が、工事現場をドラマチックに演出しています。
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夜の星空と建設機械の黄、カラーコーンの赤、背景の山の緑、遠くに見える町並みの青、夜の風景を鮮やかな色彩で表現した美しい作品です。
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美しいヴォーリス建築をレイヤーの中心に設定して、手前や奥に複雑に入り組んだ部屋や樹木の関係を丹念に描いています。このような階層構造を確認しながら空間を描く行為はとても集中力を要します。また、構造物の垂直や水平の直線と樹木の有機的な曲線の対比が美しく、見事な作品です。
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宇宙空間で働く人や機械のサイズを微妙に調節することで、広がりのある空間が表現されています。
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新しい家が建つと、以前は何があったのかが以外と思い出せないことがあります。そんな見慣れた風景の移ろいを考えさせてくれる観念的な作品です。
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竜宮城に出てくるような昔話の世界を、未来の風景として表現しています。スパッタリングによる絵の具の効果が美しく、幻想的な雰囲気を演出しています。