総評
夢けんプラザ絵画コンクールの審査も8回目となりました。
今年は新型コロナウイルス感染症の影響で開催も心配されましたが、多くの応募作品のおかげで活動を継続することが出来ました。
これも公募に参加してくださった皆様や関係者の方々のご尽力によるものだと感謝しております。
審査の場では、コロナ禍という特殊な状況の影響でしょうか、普段よりも郷土の自然や歴史や文化と向き合った作品に注目が集まりました。自然と対峙するダムや橋などの建造物、歴史深い社寺やお城や駅などの風景、そして滋賀県に縁のある作家や作品に触発された作品など、地域の魅力がいっぱい詰まった素敵な作品に勇気をもらいました。
まだまだ先の見えない状況が続いていますが、アートの力を信じて、次回も素敵な作品と出会えることを願っています。
(成安造形大学 美術領域 現代アートコース 准教授 宇野君平)
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有名な絵本「おおきなかぶ」の物語に、家族や動物と一緒に、はたらく機械が登場するユニークなパロディ作品です。臨場感のあるダイナミックな構図と登場人物の驚いた表情が魅力的な秀作です。余談ですが、この絵本の挿絵は、佐川美術館にコレクションされている彫刻家の佐藤忠良さんによるものです。
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巨大なダンプトラックが画面いっぱいに描かれています。少し右側に詰まった構図が動きを感じさ、黄色のダンプトラックと背景の緑の対比が美しい力作です。
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鉄骨を吊りあげる大きなクレーン車を中心に、はたらく人や車が繊細なタッチと色彩で描かれることで、全体としてダイナミックな空間が表現された秀作です。
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どっしりとした石垣の緻密な表現による存在感と、空に霞むような屋根の滲みの表現が、青空に向かって凛と立つ彦根城の姿を見事に表現しています。
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夕暮れ時の空が闇に包まれていく様子や、瀬田の唐橋の湖面に映るキラキラとした光の表現を、幻想的に表現したロマンチックな作品です。夜空の微妙なグラデーション、鮮やかな橋の朱色や金色、スパッタリングによる光のドットなど、さまざまな技法を駆使して描いた秀作です。
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ブルドーザーが大地を削りながら整地する様子を丁寧に描いています。土の繊細な表現から、作者が熱心に現場を見ていたことが伝わってきます。
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黒で表現された水墨画のような松の表現や、屋根の微妙な色彩の変化から、光や空間に対する繊細な感性が伝わる美しい作品です。
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救助ヘリが土砂崩れの現場で活躍する様子を丁寧に描いています。自然災害が多発する今日的なテーマを表現した作品です。
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八日市駅の風景が幻想的なパステル調の色彩で丁寧に描かれています。この色彩のイメージは、美しい夕日に触発されたのか、または駅のレリーフ作品へのオマージュかもしれないと、想像が膨らみます。郷土の自然や文化を感じとる、作者の繊細な感性が画面から伝わる美しい作品です。
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実際に桜を見ることが出来なかったコロナ禍の記憶が作品に込められています。郷土の誇りである彦根城と組み合わせることで力強い表現になりました。
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周囲の山々の緑と川や空の青が、全体的に淡い色彩で描かれることで、永源寺ダムの夏の澄んだ光や空気を感じさせる美しい作品です。
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夏の炎天下に現地で丁寧に描かれた力作です。写生を通じて神様と参拝者と作者の関係から主体と客体の問題を考察した哲学的なエピソードも魅力的です。